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闇色
† † †
「アビス君て髪きれーだねぇ」
結ってあげようか、と鮮やかな桃色の髪をした少女が言う。
「断る」
「つれないなー。そんなんじゃモテないよー?」
「結構だ」
こちらの拒絶の言葉を軽やかに流し ボクの髪を纏めながら、彼女は猫撫で声で続ける。
「あたしはアビス君と仲良くしたいんだけどな~
同じ天使で学生でおまけに風紀委員だし、仲良く出来ると思うんだよね。
そ・れ・に~……」
ーーーー闇に愛されてる者同士じゃん?
あらわにされた首筋を指でなぞられたのと同時に耳元に囁きが響く。不意に落ちたトーンに背筋が寒気を帯びた。
「あたし、キミには黒い羽が似合うと思うんだ。思いきって染めてちゃおうよ」
いかにも良いことを思い付いたとでも言いたげな声。この肌をなぞる指は本当に同じ天使のものなのだろうか。
ボクを身体ごと捕らえるように大きく黒い翼が目の前を覆う。
「だからさ、"こっち"へおいでよ、
アビス君」
† † †
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