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Monopole
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月のある夜に開かれるボクらだけの秘密のお茶会。週に一度程度だった茶会は、いつの間にか頻度が増え、気付けば毎日のように彼の部屋に訪れるようになっていた。彼は本当に紅茶が好きなようで、茶会の度にその日の茶葉について説明をしてくれた。初めは話を聞いても違いが理解出来なかったが、それでも良かった。彼が嬉しそうに話す様子を見ていることが出来たから。
それから時間を経て、少しずつ違いも理解出来るようになった。”クイズ”に正解すれば、彼はもっと嬉しそうな顔をした。その顔が見たくて、慣れない知識でも必死に覚えたのだと知れば、彼は笑うだろうか。
用意された今日の紅茶を口にする。少し渋めだがコクがあり、どこか果実のような風味を感じる。ふわりとこの紅茶独特の香りが周囲に漂った。
彼が出す紅茶は、いつもこのように香りが強めのものが多い。その所為だろうか、いつも彼が紅茶の香りを身に纏っているのは。風紀委員としては、注意しなければならないと思うが、ボクにはどうしても彼を咎める事は出来なかった。何故なら、ボクは紅茶の香りを纏う彼が好きだから。
紅茶をもう一口。喉を潤す度に自らもその香りを身に纏っているように思う。それがどこか心地良い。彼と同じ香りを纏えることが嬉しいなど、なんて滑稽なことだろう。紅茶の知識を覚えるのも、毎日のように茶会に訪れるのも、全てはキミのためであり、ボクのためだ。
ああ ルクス
キミと一緒に居られるのならボクは、何であろうとも受け入れる。
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