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†       †       †

 

 『愛してる』

 

 彼は、最期にそう言った。

 声にならない声で、そう、確かに。

 ――――ああ本当に…本当にキミは、限界まで本心を言ってくれない。

 自分に寄りかかったまま動かない、人形同然の身体を支え、髪を撫でる。

 

 「…………おやすみ」

 

 やがて、この身体は光の粒となって消えるだろう。

 ”浄化”された魂は、神の御許へ還ることが出来るはずだから。

 

 アビス。厳格で高潔な、僕らの中で恐らく最も"天使らしかった"天使。

 僕は、キミの救いとなれただろうか。

 

 「………………そして、さよなら」

 

 きっと、これから僕は、裁かれるだろう。同族を手に掛けることは何よりも重い罪だから。待つのは処刑か、永劫の闇かは分からない。けれど、僕にはそんなことはどうでもいい。彼の苦しみに比べれば、彼が背負ってきた闇に比べれば、そんなもの、優しいものだ。

 ……ああ、でも、ひと思いに消されるよりは、深い深い闇に幽閉される方が良いな。一切の光も差さない空間は、光を色濃く宿すこの身にはきっと相当な苦痛となるだろう。けれど同時にそれは、僕にとっては"救済"にもなり得るだろうから。

 

 

 ――――嗚呼 アビス

 

 

 「僕も、キミを愛しているよ」

 

 

 ――――永遠に

†        †        †

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