蠱惑
キャラ崩壊気味。ご注意。
† † †
「……天使といっても、所詮はこんなもんなんだね」
嘲るような、飄々とした声が耳に障る。しかし、それに反応する気力など、今の自分にはもう残ってはいなかった。頭の後ろで手首を拘束している鎖が鳴る。何か術でもかけられているのか、触れている部分に不快な痺れが走っている。どれほど時間が経ったのだろうか。そんなことを考えるのも諦めるほどの間、自分達はこの場所で二人きりだった。
「そんなに、イイんだ?」
「――――っ」
唐突に翼に触れられて、反射的に体が跳ねる。その反応に満足げに笑みながら、目の前の悪魔は指で羽根を弄ぶ。慣らされ、敏感に刺激を感じとる自身の不甲斐なさに内心で唇を噛んだ。
「翼だけで感じられるなんて、天使って案外、オレ達より淫らなんじゃない?」
耳元に息がかかる。反応しては相手の思う壺だと分かっていても、持ち前のプライドがそれを妨げる。
「愚弄…するな……!ボクらは、お前たちのような卑劣で、不純な存在とは違う……!」
そう吐き捨て、間近にある青緑色の瞳を睨み付ける。同じであって堪るものか。こんな、奴らと。
「………………」
冷たい色を帯びた目が細められた。そして相手はまた僅かに身を乗り出す。その瞬間、
「――――~~っ!?」
全身の肌という肌が粟立つような感覚が体を襲った。もう一度襲ってくる感覚と同時に聞こえた ぬめついた水音に、光輪を舐られたのだと悟る。
「フゥン、こっちの方が良さそうだね…」
指でなぞられるだけで全身を愛撫されているようなおぞましさを感じた。しかし否定する余裕すら、もう無かった。体中が熱を帯び、また、悪寒を感じたときのように身が細かく震えた。この感覚が嫌悪なのか快感なのか、もはや判断が出来ない。
「貴、様……」
「誰が、オレ達みたいに不純じゃないって?」
問いながら、悪魔は再び輪に舌を這わせる。その所為で言葉を発しようにも叶わず、口を開けば吐息ばかりが漏れた。
「そんなクソみたいな驕り、今すぐ無くしてあげる。分からせてあげる。お綺麗なフリをしてても結局オレ達と同じだって事を」
「…………っ」
「ほら、早く"オチ"ちゃいなよ、その方がそんな苦しそうな顔をしてるよりもよっぽど楽だからさ」
甘い声色で、甘い囁きが耳を犯していく。
少しずつ、力が、意思が、抜け落ちていくのを感じた気がした。
† † †
悪魔と天使で、特にこの二人は険悪だと良いなって…